お墓じまいでもめたら行政書士に相談するのも手ですって?!
新聞や雑誌、テレビの情報番組でも墓じまいが取り上げられることが珍しくなくなってきました。一般市民の関心とニーズの高まりの表れであり、お墓じまいに携わる法律専門職の端くれとして、的確かつ正しい情報を発信していかなければならないと身が引き締まる思いです。
ところがそんな私の想いを揺さぶるかのような、ある雑誌のタイトルに目が留まりました。そこには、「墓じまいでお寺と揉めたら行政書士に相談するのも手」とあったのです。
確かに、墓じまいは自分でやってできないことはないかもしれません。昔と違って、近ごろでは市区町村役場の窓口もだいぶ親切になってきましたので、改葬許可申請に必要となる書類も、本人が窓口まで赴けば交付してくれますし、何より専門家に依頼すれば費用がかかる、自分でやれば必要最小限の費用で済むといったことから、自分でやってみようとお考えになる気持ちは決して分からなくはありません。
しかし、お世話になったお寺さんやご住職への感謝の気持ちを伝えるよりも先に唐突に墓じまいを持ちかけたらどうなるでしょうか。また、ご先祖様やお墓に対する向き合い方・考え方はご親族の皆様それぞれあるにもかかわらず、たとえ墓守の立場にある方とはいえ何の説明もなく一方的に墓じまいをすることにしたからと連絡があったりしたら他の親族の皆さんはどう思われるでしょうか。そんなことをすればどのような結果に至るか、想像することはさほど難しいことではないはずです。
ここ数年で、お墓じまいに関わるトラブルは確実に増えています。いくつか例を挙げるとすれば、(1)墓じまいを申し出たところ菩提寺の住職から埋蔵証明書の発行に協力してもらえない、(2)びっくりするような高額な離檀料を請求されて困っている、(3)墓地の原状回復をするために石材業者に作業の依頼をしたところ境内への立ち入りを禁じられたため裁判所への申立て・法廷闘争にまで発展してしまった、などが報告されています。これらは、極端な事例だと思われるかもしれませんが、一歩間違えば誰にでも起こりうる危険があるのです。人間関係においても軽い気持ちで発した言葉や何気なくとった行動が関係者の感情的な対立を誘発し決定的なトラブルになってしまうように、実はお墓じまいの中でも何気ないたったひとことが決定的なトラブルを引き起こしてしまうことはよくあることなのです。
もしも、墓じまいで揉めてしまったら、菩提寺のご住職やご親族の方とのわだかまりを解くための話し合いの場を整えて、双方の行き違いや誤解を解きほぐす作業を続けるしかありません。これは口で言うのはたやすいことですが、時間的にも金銭的にも、さらには精神的にもかなりの負担を強いられます。「墓じまいで揉めたら行政書士に相談するのも手」といった無責任なアドバイスは、個人的には「身体に不調を感じた場合でも、とりあえず市販薬を服用しなさい。それでもどうしても治らないようだったら、その時になってから医師の診察を受けるのも手」とアドバイスするのと同じくらい非常識かつ無知な対応だと言っても過言ではありません。このような無責任な記事に対しては、個人的には憤りを感じていますが、ぜひとも皆さんにはいい加減な記事に惑わされないでいただきたい。時間も手間も費用も何倍もかかってしまうばかりか精神的にも大きな負担となることを避けるためにも、もめたら専門家に相談するのではなく、最初の段階から墓じまいに精通した専門家に相談し、速やかに円満にお墓じまいをされることを強くお勧めします。
お墓じまいに関する情報が氾濫している現代だからこそ、私たち一般消費者には情報をきちんと分析したうえで自分のものとして取り入れる覚悟と責任が求められているといえるのではないかと思います。そもそも墓じまいに対してどのように向き合いどのように始めるか、それはもちろんあなた自身が決めることですが、お墓じまいなどしなければよかったなどと後悔される方をなくしていきたい。
だからこそ、これからも私は、他人の美談に惑わされることなく、お世話になった菩提寺に感謝の気持ちを伝えるとともに、ご親族がわだかまりなくご供養の心を持てるお墓じまいをご提案し続けていきます。